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新進気鋭の作家が問う暮らし 柏倉風馬さん

美術新人賞デビュー2017 グランプリなどを始め、様々な賞を受賞し注目を浴びる新進気鋭の作家、柏倉風馬さん。これまでも多くの方から、大江町で生まれ育った彼を取材してほしいとの声を頂き、この度やっと彼にお会いすることができました。

 

2017 年に東北芸術工科大学大学院芸術文化専攻洋画領域を修了し、卒業後も画家として活動を続ける柏倉さんは「身体性」をテーマとした作品制作を行っています。 自宅と、隣町である⻄川町の廃校の一室をアトリエとして活動する彼と道の駅で待ち合わせして、まだ雪が残 る景色のアトリエへ。広々とした空間には、先日展示会を終えたばかりの作品などが数多く並んでいました。

彼の代表作である「NOT BODY YET」シリーズ。「何が描いてあるのだろう?身体だろうか?」きっと多くの方が そんな感想を持つのではないでしょうか。

『”身体として認識される前のもの”を描きたいと思っています。初対面の人と会ったときに、会話していく中で相手の人となりが分かっていきますよね。逆に分からないうちは「ヒト」であることしか分からない、そういった、初めて会った人に持つ印象みたいなものを除いた状態を描きたいと思っているんです』そう話す柏倉さん。『キャンバスに描かれた絵が何にみえるかは人それぞれの解釈があって構いません。たまにわさびに見 えるって言われることもあったりして (笑)。身体のように見えるけど、なんだろう?と見えること自体が僕の 描きたいことなんです』。全面に銀泊を押した上に和紙を重ねたものに鉛筆で描いた絵。見ていると、意志を 持った淡く力強い生物に見えてきました。

『自分でも自分の描いているものを表す言葉を探していて。最近、展示会などを通して人に説明する機会が多 くなってから、だんだんフィットする言葉も見つかりはじめたのですが、なかなか難しくて』。幼少期から何かをつくることを好み、絵を描いてきたという柏倉さんが美術の道を志したのは、高校生で美術部に所属したのがきっかけだったそうです。その後美術大学に進学し、自分自身に向き合ったコンセプチュアルな作品が始まりました。『僕は一度に多くのことをこなすのが苦手で。多様化している現代では様々な役割が求められますが、そうしたことにハードルを感じることもあったりします。そういった「自分のできない部分も認めてあげたい」、そんな想いが作品のテーマや制作の原動力に繋がっているのかもしれません』。

膨大な情報に囲まれ、複雑化するコミュニケーションの中で暮らす私たち。誰もが抱える生きにくさや不安など、目に見えず、答えもよくわからないもの。大半の人は想いを自分の中にとどめたり、表現する技法や発信 する体力を持たないのではないでしょうか。そんな中で不明瞭な感情やものごとに真剣に向き合い、可視化しようとしているものが柏倉さんの作品なのだろうか、取材を通して作品を見つめるうちにそんな気持ちになりました。

クールでマイペースそうな印象の柏倉さんですが、絵を描くことを通じて、とてつもなく大きなものに立ち向かっている、そんな若者が大江町にも暮らしています。

 

(文・写真:布施)

柏倉風馬 公式ホームページ https://www.fuma-kashiwagura.com

山形県大江町ホームページ http://www.town.oe.yamagata.jp